先日DVDを購入しましたが、いやぁ・・・
20年以上前に見た時も思ったけど、ホントに
言葉にできないほどの素晴らしい作品。
このアマゾンのレビューでもあるように、本当に見終わった後、
立ち上がれないほどの感動なのである。
当時、すでに20年以上前、まだ日本ではヴーヴクリコすら、
あまり知られていない頃だったはず。
そんな昔に映画館で見て、
あまりの素晴らしさに脳裏に焼き付き、忘れられない映画に。
DVDも、フレンチのシェフが買っていると噂で、
中古で6万とかで出回るほどの超高額であったのに、
再販されず、ようやく・・・。
しかし、あらためてこの映画を鑑賞すると、
本当に至高のグルメ映画というだけではなく、
上質な恋愛映画でも有った訳で、
その深さや意味が、20年前の、まだまだ子供だった自分には、
やはりまだ理解できなかったけれど、
今となっては、見終わって号泣してしまうほどの、「愛の成就の形」に
打ちのめされてしまうことになるとは・・・
おそらく、実生活で、普通に恋愛を成就させて、
家庭を持ち、そこそこ仕事でもまあなんとか成功して、
「自分の人生も、まあ悪く無いなぁ・・・」って思ってる人は、
こんな愛の成就の形は
「バッカじゃねえの?、リアルに愛を形にして得てこそじゃんか。」
と思うのかもしれないし、
「某巨大ダディ」などという、本能のままに、結婚してたくさん子供作って、
離婚して再婚して・・・っていう話が大好きな
現代の日本人には、もはや、この映画の中の話など、
「竹を切ったら女の子が出て来た」くらいのナンセンス度なのかもしれない。
むしろ、そういう人達の方がリアルな現実は幸せなのかと思うけれど、
この話の崇高さがわからない可哀想な人でもあるなと思ったりする訳で。
そして、芸術に関してのくだりも、心を打たれる。
自分もモノを作る仕事をしているので、
「貧しい芸術家は居ません」という最後のくだりもすごく良かった。
声楽家だったり、料理人であったり、デザイナーや絵描き。。
そういう、世の中では、さもすると「無駄」と思われるものは、
時として、人の心を揺さぶってそれで金銭を得るのだけれど、
まず、「音楽には全く興味が無い」
「芸術とか意味がわからない」
「デザインなんかしてなくて良いから実用的なものを」
「普通に美味ければ料理にはこだわらない」
と思っている人は、
この映画は見なくていいのだと思う。
とにかく映像自体も美しい。
いや、映像というより、その構成の仕方が絶妙なんです。
映像はホントに殺風景な北欧の田舎の漁村。
白黒?と思うほど、木々の緑も出てこなければ、
北欧にはありがちな、カラフルな家の壁も屋根の色も、
洋服の色に至っても、モノトーンなのである。
そうやって、わざと無駄な色目を排除し、
後半の豪華な料理の色や艶や質感を際立たせているのだという。
まさにシャンパーニュの微妙な色合いや泡立ちまで手に取るようにわかる。
登場人物もそうだ。ほとんどが老人。
しかし、後半給仕をする、まだ子供のような男の子だけが、
ブロンドヘアーで美しい白い肌をしていて、
その淡々とした給仕っぷりがまた愛らしくもある。
この物語は登場人物の感情は抑えめで、悲しい場面でも、嬉しい場面でも、
ただ淡々としている。
それがまた、その人物達の過去や秘めた熱い思いを際立たせているのだと思う。
人生には、必ず帰路に立たされ、どっちの道に行くか?
の選択を迫られる時があって、
そして、自分の進んだ道が正しかったかどうか?を確認する時にぶちあたった時、
もし自分の選んだ道にその時後悔したとしても、
その間違いを認めても良いんじゃないか?。
ということをこの物語は伝えているんだと思う。
敬愛する甲本ヒロト氏の歌の歌詞に
「悔いのない生き方は、後悔の繰り返し」
というくだりがあるのだけれど、
まさにこの映画の言いたいことはそこなんだと思う。
この映画は、前出の、「自分の人生にそこそこ満足していて、後悔は無い」という人には
おそらく心を打たないと思うから、おすすめしないけれど、
ちょっとでも見てみようかなと思った方には、
ヴーヴクリコとは言わなくても、
好きなシャンパンかカヴァ、もしくは赤ワインと、サバラン。
上質なチーズなんかを、
キッチンに用意して置いてから、見るのが良いと思う。
決して食しながら見てはダメ。
でないと、見終わった後、立ち上がれないほどの感動を、
立ち上がらせる理由が無くなってしまうからね。